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東京高等裁判所 昭和57年(ネ)3160号 判決

当裁判所も、控訴人の本訴請求を失当とするものであり、その理由は、次のとおり削除・付加・訂正するほか、原判決理由中の被控訴人ら関係部分記載のとおりであるから、これを引用する。

一 原判決七六枚目裏六行目の「及び第二発明のDの事項」との記載及び同八行目の記載を削除する。

二 同八〇枚目表三行目から同八二枚目表三行目までを次のとおりに訂正する。

「(三)ところで、第一発明の(ろ)の「液体の流れを実質的に均一の厚さの長く延びた端縁部をもつ薄く延びたフイルムにするための長く延びた放出縁を備えていること」との文言は、文言そのものとしては、「液体の流れを実質的に均一の厚さの長く延びた端縁部をもつ薄く延びたフイルムにする」という機能を有する「長く延びた放出縁」を備えていることを示しているようにみられないではない。しかし、「長く延びた放出縁」が、フイルムの「長く延びた端縁部」を形成する機能を有することは容易に考えられるところであるが、これが「実質的に均一な厚さの」「薄く延びたフイルムにするため」の機能を有するものでないことは、その単に「長く延びた放出縁」とされている構成自体から疑う余地のないものであるところ、このことと前記(二)に認定した事実をあわせ考えれば、第一発明の(ろ)は、フイルムの形状を長く延びた端縁をもつものとしその端縁から液体塗料を霧化放出するための「長く延びた放出縁」と右放出縁に「実質的に均一な厚さの」「薄く延びた」液体塗料のフイルムを提供する「塗料供給装置」がいずれも第一発明の構成に欠くことのできない事項であることを機能的表現をもつて明らかにしているものと解すべきものである。

控訴人はこのことを争い、そのような塗料供給装置は当業者にとつて自明な液体噴霧の通常の手段を適宜採用すべきものである旨主張する。しかし、控訴人提出にかかりいずれもその成立について争いのない甲第一六号証、甲第一七号証及び甲第二四号証によれば、これらにはいずれも噴霧形成装置であつて回転する部分を含むものが記載されているけれども、それらは、回転筒面に小孔から液体を噴射するものであつて液体がフイルムを形成するかどうか明らかでないもの(甲第一六号証)、圧力による送出と皿状円板の回転とが相まつて液体は一応右皿状円板上に展開するが、これが実質的に均一な厚さの薄く延びたフイルムを形成しているかどうか明らかでないもの(甲第一七号証)、あるいは「のこぎり歯状の回転動作」という要素を加えることにより噴霧化を図るもの(甲第二四号証)などであり、これらから、前記三の(二)に認定した第一発明の主目的を達成するに足りるような「実質的に均一な厚さの」「薄く延びた」フイルムを提供すること、特に、それを主としてフイルム支持体の回転によつて達成することが当業者に自明であつたとすることはできず、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。

三 同八二枚目表四行目に「及び第二発明の(D)は、」とあるのを「は、前認定のような機能を有する」と訂正し、同五行目の「それぞれ」、同五、六行目の「及び第二発明」及び同七行目の「いずれにおいても」、同一一行目の「、第二」及び「各」、同八二枚目裏一行目の「、第二」、同四行目の「(一)」を削除し、同五行目の「前記三ノ(一)」を「前記三(一)」と、同八三枚目表一行目の「霧化機構の高速」を「主として霧化機構の」と訂正する。

四 同八三枚目表六行目から同裏六行目まで、同八四枚目表一行目の「、第二明細」から同五行目の「それぞれ」まで、同行目の「いずれの」から同六行目の「説明の項にも」まで、並びに同一〇行目の「、(二)2頁左一四―一七」の各記載を削除し、同一一行目の「A特許」の前に「前記特公昭三二―九七八四号にかかる」を付加する。

五 同八九枚目裏八行目の「溝」から同一〇行目の「示された」までを、「添付の第6図及び第7図にオリフイスに該当する溝329を具備した」と訂正する。

六 同九二枚目表三行目に「支持表面を回転させる」とあるのを、「支持表面をオリフイスとの相対関係において回転させる等オリフイスと支持体面とを、縁部の延びる方向に相対的に移動させる」と訂正する。

七 同九三枚目表三、四行目に「、第三号証、乙第一号証及び成立について争いのない」とあるのを「及び乙第一号証、成立について争いのない甲第三号証及び」と、同九六枚目表一〇行目の「。」を「、」と訂正する。

八 同九九枚目裏一〇行目の「認められる。」の後に次のとおり付加する。

「乙特許の明細書中の前記各記載、特に前記(1)の<5>及び<6>の各記載並びに同明細書(前記丙第二号証)中の第3図及び第4図をあわせ考えれば、右各図における開口(オリフイス)215は噴射頭体200の内壁216に向けて液体を圧し出すことにより一応は液体の均一な模様を右内壁上に形成しうるものであり、噴射頭体の回転は、この模様をさらに均一なものに形成されるようにするためのものであることを推認するに難くないから、右各図の存在は、前記認定を妨げるものではない。」

九 同一〇〇枚目裏末行の冒頭に「4」を付加し、同行の「及び第二明細書」、同一〇一枚目表八行目の「高速度」、同一〇一枚目裏二行目の「高速」を削除し、同一〇二枚目表二行目の「に関する技術」の後に「思想」を付加する。

一〇 同一〇二枚目表三行目の「いわざるをえない。」の後に次のとおり付加する。

「控訴人は両者の霧化頭の回転速度に有意の差はない旨主張するが、前述のとおり、具体的な回転速度の差異は両者の技術思想が相違することの結果にすぎないから、控訴人の右主張は右の結論を左右しない。」

一一 同一〇二枚目表五行目の「及び第二発明の構成要件(D)」並びに同七行目の「及び第二発明」及び「各」、同九、一〇行目及び同末行の「及び第二発明」を削除し、同一〇二枚目裏一行目の「技術」の後に「思想」を付加する。

一二 同一〇二枚目裏二行目の次行以下として、次のとおり付加する。

「七 つぎに、前記二の2に認定した第二発明の構成に欠くことのできない事項として特許請求の範囲に記載された事項のうち、(C)及び(D)の事項が、どのような技術的事項を内容とするものであるかの点を検討し、これらと被控訴人各装置の構成とを対比することとする。

1 前記甲第一号証及び甲第三号証によれば、次の事実を認めることができる。

(1) 第二明細書の発明の詳細なる説明のうち塗料供給装置及び霧化機構に関する部分並びに実施例に関する図面は、第一明細書のそれらと同一のものを含むものであること。

(2) 実施例に関する説明中には、「第6図(イ)に示すごとく、液体塗料は放出縁12の内側に沿つて実質的に均一な厚さの環状に長く延びた端縁部をもつ薄いフイルム31´を形成し、このフイルム31´の端縁から図示のごとく霧化される」((二)2頁右二八―三二)との記載があり、右第6図(イ)においては、フイルムの端縁の全面からではなく、右端縁上のほぼ等間隔を置いた点から放射状に液体塗料が霧化している状態が開示されていること。

(3) 第二特許は第一特許からの分割出願にかかる特許であり、第二明細書の発明の詳細なる説明中にも、「本発明は上記の霧化装置(注、第一発明の霧化装置)を中心軸の周りに同心に形成し、かつ中央の室を設け、この中央の室から霧化装置の外周に沿つて霧化装置の軸と同心の円をなして位置する多数の点まで液体塗料を導くようにしたことを要旨とするものである。」((二)4頁左八―一二)との記載の存すること。

2 以上の事実によれば、第二発明における(C)及び(D)の事項は、前記三ないし六に認定した技術的意義を有する第一発明における塗料供給装置についてさらにこれを具体的に構成したものにすぎず、したがつて、被控訴人各装置はすでにこの点において、第一発明について前示したと同様の理由により、第二発明の技術的範囲に属しないものといわなければならない。

3 そればかりでなく、右甲第三号証によれば、第二明細書には、実施例についての説明中に、中央の室に液体塗料を供給する管に関連して、「管18は第2図に示すごとく管20により液体塗料源に連結し、その液体塗料は大気圧その他適宜の操作圧力を受ける。」((二)2頁左三八―四〇)との記載があることが認められるところ、この記載と、第二発明の装置も第一発明と同じく、噴霧頭から霧化される塗料の分布の均一性を改良することを目的とするものであり、(C)の「中央の室」が、(D)の「中央の室から霧化装置の外周に沿つて霧化装置の軸と同心の円をなして位置する多数の点に液体塗料を導く装置」に液体塗料を供給するものであることとをあわせ考えれば、右「室」は、(D)の装置すなわち具体的には管ないしはスリツトの各部分に等量の液体塗料を供給するため室の内部にある液体塗料全体の各部分が均等な圧力となるようなものであることを要し、したがつて、(D)の塗料導出装置及び中央の室に塗料を供給する装置例えば前記管18に連結する部分以外は、密封された構造になつていることを要するものとみるのが相当である。そして、そのような密封構造になつていれば、前記記載にもみられるような操作圧力を加減することにより、霧化装置の回転速度を調整するなどの操作をすることを要しないで、霧化頭への塗料の供給量を適宜調節することもできることが明らかである。

4 しかるに、控訴人が被控訴人各装置において第二発明の「中央の室」にあたると主張する空間Zは、噴霧頭の前方に向いた部分は基体Bの後壁で、側方は第一筒体Fあるいは筒体Fの内周壁で閉鎖されているが、後方に向いた部分は、その周辺の一部が第一筒体Fあるいは筒体Fの後端に設けられた内向きの環状突縁Sの前面で遮られてはいるものの、その大部分は外部の空間に対し開放されているものであることは、被控訴人各装置の構造を示すものであることについて当事者間に争いのない原判決別紙第一ないし第四目録の記載により明らかであり、その空間Zが塗料導出部分及び塗料供給装置以外は密封されているとは到底いうことができないのである。そして、このため、被控訴人各装置においては、空間Z内に液体塗料を導入することにより、その各部の圧力を均一にすることができず、右空間に導入される液体塗料の圧力を調節することにより噴霧頭への塗料供給量を調節することもできないことは構造上明らかである。

以上のとおりであるから、被控訴人各装置は、第二発明における前記(C)の「中央の室」を欠くものであつて、この点からも第二発明の技術的範囲に属するとはいえないものである。」

一三 同一〇二枚目裏三行目の「七」を「八」と訂正する。

したがつて、原判決は正当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとする。

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